編:福音館書店から「日本の野鳥」シリーズ全6巻が復刊されました。この本ではひとつひとつの鳥がとても大きく描かれていて、「絵本のような図鑑」といった雰囲気ですね。
竜:1973年に1巻目の「にわやこうえんにくるとり」が刊行されましたが、まさに「絵本図鑑」として当時企画されたようです。それまで野鳥の本といえば、小さい図が並び、細々と生態が記された図鑑がほとんどで、野鳥に興味がある人ではないと手にすることもないようなものでした。そこで絵を見ているだけでも楽しめるように、見開きで1種の鳥を大きく、また生息環境も描きこむことによって解説を読まなくともその鳥の生態がわかるようにしてあります。
編:絵本とはいっても、野鳥好きな大人にもたまらない本です(笑)。探鳥会でリーダーさんが参加者に説明をするときにもよく使われているそうですよ。
竜:ありがたいですね。大きな絵なので後ろの方も見やすく、何より見開き1種が基本ですので頁を開くだけというのもいいようですよ。いくつもの種が載っていると「右の頁の上から何番目の写真の…」と、指差さなきゃいけない。
編:ところで、このシリーズは初版が発売されてからすでに40年が経っています。今回新たに復刊された経緯を教えてください。
竜:福音館書店の創立60周年記念企画として、全国の図書館員の方々に「もう一度出会いたい本」のアンケートをとったそうです。その中で「日本の野鳥」シリーズも入れていただいたようで、晴れて復刊となりました。当館でも「あの6冊のシリーズはもう買えないの?ここに来れば手に入ると思ったのに…」とよく言われてまして、私としてもとても嬉しいです!
編:6冊はどんな順番で出たんでしたっけ?
竜:1973年の「にわやこうえんにくるとり」に始まり、「そうげんのとり」「やまのとりⅠ」「やまのとりⅡ」「かわやぬまのとり」と続き、1980年の「うみのとり」で完結しています。6冊で213種の野鳥を取り上げています。
編:足かけ8年... 大作ですね。取材にもかなりの時間をかけられたのですか?
竜:最初の頃はそうだったみたいですね。何せ今ほど野鳥の資料も情報も多くはないので。ただ、とりあえず身近な鳥からいこうと「にわやこうえんにくるとり」の刊行が決まったものの、「先の仕事が…」など理由をつけ薮内の筆がなかなか進まない。そこでしびれを切らした担当編集の方が、「じゃあ2巻目以降の取材を先にするか」と、北海道に連れて行ってもらったそうです。薮内も鳥を見るためだけに北海道に行ったことは無かったので、最高に楽しかったみたいですね。何せ毎日のように初見の野鳥と出会えるわけですから。そこで編集の方曰く、「さ、取材とはいえ充分楽しんだのだから…次にすることは、な!」。先にアメを与えられたわけですね。その後は取材には出るものの、それこそ他の仕事があるのでノンビリとするわけにもいかず、結構慌ただしかったようです。
編:ところで1991年に同じ福音館書店から「野鳥の図鑑 にわやこうえんの鳥からうみの鳥まで」という厚い本が出版されていますが、これとの違いは何ですか?
竜:この本は「日本の野鳥」シリーズ6巻を1冊に合本したものです。版型は小さくなってしまいましたが、新たな種を加えたりしてこの一冊で基本的に事足りる、まさに「図鑑」ですね。ただ落とされてしまった画もあるのですが…。
編:落とされたというのは、分冊の時にはあった画が合本に際し無くなった、ということですか?薮内ファンとしては非常に残念…やはり全部の画が見たいですよねぇ。具体的にはどこが違います?
竜:例えば「にわやこうえんにくるとり」の中で、スズメやツバメ、ムクドリなどは複数頁にわたって登場していますが、合本化に際し見開き2頁のみの掲載となりました。つまり分冊でしか見られない画があります。また「そうげんのとり」のキンパラやギンパラなどは外来種指定されたため、やはり合本の「野鳥の図鑑」では見られなくなっています。ちなみに今回の企画展示「日本の野鳥復刊記念展」では外された原画も何点か展示しています。
編:なるほど、手軽に卓上図鑑として使える「野鳥の図鑑」か、大きな版型で迫力ある画を楽しめる「日本の野鳥」か特徴がありますね。それと、今回の分冊版「日本の野鳥」は限定復刊なのですよね!?
竜:はい。在庫が無くなればオシマイ、ですね。
編:そうか... 復刊の6巻セットの専用箱もなかなか魅力的だし、うーん... 悩ましいところですね(笑)。
竜:どうぞごゆっくりと悩んで下さい(笑)。
編:今日は楽しいお話をありがとうございました。